認知症。それは誰もがなる可能性のある脳の病気です。
「自分は昔から学校の成績も仕事も順調にこなせていたから大丈夫」
「何の病気もないし家族で認知症になった人はいないから大丈夫」
こんなふうに思っている方も多いかもしれません。
ですが、認知症の最大のリスクは加齢だと言われています。
ということはこの超高齢社会の日本において、認知症は誰もが将来なる可能性があるということとなります。
私達は周りの誰かが認知症になった時、そして自分が認知症になったときのことを考えておかなければなりません。
では実際に認知症当事者の対応というのはどうすればいいのでしょうか?
今回の記事が皆さんの現在の、そして将来のヒントになればと思います。
こころのバリアフリーと人間杖
私は普段、認知症の基礎知識や対応の話について、地域で講演をしています。
そして地域の中では
「認知症の人は楽でいいよね~。だって何もわからないんでしょ?」
というようなご意見をお持ちの方が少なからずいます。
認知症キャラバン・メイトの立場で言わせていただきますが、
これは大きな間違いだと断言させていただきます。
(もちろんそう言っている本人がそう信じるのは一向に構いませんが、将来同じ状況になった時に困るのはご自身ですので。)
物忘れによる失敗などで認知症当事者は
「なにかが起こっている」
という不安を感じ始めています。
そして症状が進行してくると家族や周りからダメ出しを受け始めます。
もちろん周囲も困惑はあるでしょうが、一番辛いのは他ならぬ本人です。
皆さんはこの時の本人の気持ちを想像することはできますか?
手足が不自由な人は周りに声で助けを求めることができます。
ですが認知症の当事者はどう助けを求めていいのかがわからないということが往々にしてあります。
本人は自分の障害を補うつもりでメモを書きますが、
そのメモを書いたことを忘れてしまう。
ついにはメモの書いている意味がよく分からない。
という景色を見ているのです。
これはとても辛いことです。
そんな時に周囲の人達の力「人間杖」が必要なのです。
そしてこの人間杖は、さりげなくがセットであることが望ましいと考えています。
あからさまにお世話してます感を出すと本人のストレスになってしまいます。
これを実践していくことで、「心のバリアフリー」を作り出していくことに繋がります。
認知症になっても安心して自分のまちで暮らせるよう、一人でも多くの人に心がけてほしいと願っています。
キーワードは「安心感」
先ほど、認知症の当事者は不安を感じていると書きました。
では、認知症の当事者はどんな時に安心感を得られるのでしょうか?
やはりここは、どんな時も周りが当事者に「大丈夫だよ」と伝えることだと思います。
「失敗しても忘れても大丈夫」、何かしているときでも急かさずに「ゆっくりで大丈夫」
これをにこやかに伝えることができれば当事者は安心できるでしょう。
さらに、「ありがとう」という感謝の言葉を伝えることも大切です。
認知症の当事者は初期に頃、今まで出来ていたことが出来なくなっていき、「自分は家族のお荷物になっているのでは・・・。」
と感じていることもあるようです。
本人のできることを共に探して、お願いし、感謝の気持を伝えていきましょう。
誰も幸せにならない認知症対応の仕方
●失敗した時に厳しく注意する。
●子ども扱いする。
●ぞんざいにモノ扱いする。
●「〜しないと〜してあげない」など交換条件をつける。
●「早く!急いで!」などと急かす。
●無視・放置など。
これらのような対応では誰も幸せになりません。
認知症当事者は自尊心を失い、家族は介護疲れへ一直線です。
認知症の症状である記憶障害などは初見の人にとっては
「えっ!?なんで!?」という風に見えるものです。
そして意外かもしれませんが、介護のプロであっても自分の家族に対してはイライラしてしまうこともあります。
あくまで認知症の症状であるということを理解し、当事者に真摯に向き合うことが大切です。
その人を知ることから始める
多くの人は認知症になったら、まるでその人が別人になってしまったかのように感じてしまうでしょう。
私としては認知症という病気に焦点を当てるのではなく、
当事者を一人の人間としてその人自身と接することが大切だと思います。
そのためにはその人がこれまでどんな人生を歩んできたのか、
どんなことを大切にしてきたのかを
知ることから始めましょう。
対人関係の基本である
自分がされて嫌なことはしない
という心構えを持つことが大切です。
その人の一部に認知症があるというだけのこと
ここまで書いておいて言うのもなんですが、
認知症との向き合い方に100%の正解はありません。
なぜか?
その人その人で歩んできた人生が違うからです。
あくまで認知症という障害はその人の一部分であって、
その人のすべてが認知症で覆われているわけではありません。
こう考えるとその人の歩んできた人生にスポットライトを当てること繋がります。
昔の写真を眺めながら、これまでの人生を共に振り返ってみましょう。
そうすることで今まで知らなかった一面を知ることが出来かもしれませんよ。
おすすめ書籍紹介
最後に私のおすすめ書籍を紹介します。
川端智さん著の「マンガでわかる!認知症の人が見ている世界」です。
ケアする側の人の視点と認知症当事者の視点をマンガで大変わかりやすく表現してくれています。
これを初めて読んだ時、
「えっ!?本人ってこんな感じに見えてるの!?」
と、衝撃を受けたことを思い出します。
知り合いの介護福祉士さんに紹介したところ、早速職場で購入して職員の皆さんで読んでいるとのことです。
認知症のことを学んでみたいと思っている方には1冊目として激推しの1冊です。