認知症という言葉、ずいぶんポピュラーな言葉になってきて、高齢者の皆さんの健康維持のキーワードとしても度々登場するように感じます。
そんな「認知症」という言葉ですが、
登場する文脈によっては自虐や卑下する言葉としても、日常生活で使われている場面に出くわすことがあります。
言っている本人は冗談で言っているのはなんとなく分かっているのですが、私としてはモヤッとしてしまうことがあるんです。
今回は「認知症」という言葉の扱い方について思ったことを、つらつら書いてみようと思います。
痴呆症から認知症へ
今でこそ認知症という言葉が浸透していますが、
これ実は2004年から名称変更になっていたのをご存知でしょうか？
以前は
痴呆症
という言葉が使われていました。
痴漢の「痴」に、阿呆の「呆」で痴呆性。
よく見ると結構ひどいですよね。
こんな漢字を使っていたために世間では
「うちの婆ちゃんが痴呆になったとか恥ずかしくて近所に言えない」
という今となってはよくわからない家族の見栄で事実を隠したり、病院受診の妨げになったりしていました。
これでは認知症当事者の人権が守られない、ということで
2004年から「認知症」という言葉へ変更されたわけです。
ちなみに認知症という漢字には
「認知する力」が弱まった状態、
つまり、物事を正しく理解することが苦手になったという解釈が込められています。
認知症治療の第一人者、故長谷川和夫先生が
「認知症になったからと言って何もかもわからなくなるわけではない」
とおっしゃっていたのはこういう理由です。
あの人「認知」なんじゃない？
病院関係に勤めているので本当によく聞くワードがこれです。
よく聞くが故に、正直私の中で気に入らない言い方の一つでもあります。
単純に認知症という言葉の略だというのは頭で理解はできるのですが、
どうも軽蔑っぽく聞こえてしまうのです。（考えすぎなのかもしれませんが）
話の文脈でも
「最近忘れっぽくなってきてねー」
⬇️
「認知じゃない？ｗ」
というやりとりを非常によく見かけます。
この「ｗ（わら）」のような雰囲気が出るのはなぜなのでしょうか？
同じ障がいでも体の不自由な身体障がい者の方に
「ｗ（わら）」という雰囲気を出すのは
「失礼だ」
「本人がどれだけ困っているか知らないくせに」
という論調が飛び交うのに、
認知症については言ってもいいんでしょうか？
認知症になったからと言って、その人の価値を下げるような思考はどうかと最近強く思います。
これは人権を考える上で非常に大事なことだとも思います。
終わりに
この超高齢社会の中、その生涯でいつ誰がなってもおかしくないのが認知症です。
私も、これを読んでいるあなたも、将来認知症を患うリスクは大いにあります。
最近は「新しい認知症観」という言葉も登場し、
考え方のリフレーミングが起こっています。
まずは、認知症という障がいがジョークとして扱われない、
そんな日が来ることを願いながら、
日々の講演活動などを続けていきたいと思います。
ではまた。
