皆さんにとって認知症の症状で真っ先に思いつく症状、
それは「物忘れ」だと思います。
ですが、認知症の症状にも種類があるのをご存知でしょうか?
今回は認知症の症状の一つ「見当識障害」についてご紹介したいと思います。
※記事内では便宜上、認知症の状態にない人のことを「健常者」と表現しています。
見当識障害ってどんなもの?
認知症には核となる症状、いわゆる「中核症状」というものがいくつかあります。
皆さんが真っ先に思いつく「記憶障害」も中核症状の一つです。
では、「見当識障害」とはどういうものでしょうか?
ざっくり言うと「見当をつける力が障害された状態」を指します。
健常者であれば、
「今が大体どれぐらいの時間で」
「大体この辺りにいて」
「季節はいつ頃で」
など、今置かれた状況を間違えることなく把握できると思います。
ところが見当識障害を発症するとこの「見当をつける力」が障害されてしまいます。
具体的にいうと
- 日付がわからない
- 季節が把握できない
- 自宅の近所でも迷子になってしまう。
- 今目の前にいる人が誰なのか分からない。
などが挙げられます。
季節がわからない状態では夏場でも冬服のセーターを着ている場合があったり、
外出中に自分の立ち位置がわからなくなりウロウロ歩き回って迷子になってしまったりします。
また、人の顔を声や体格、話し方などの総合的な雰囲気だけで把握しようとするため
「今目の前の人が誰かわからない」ということが起こります。
すると家族が目の前にいても「どちら様ですか?」ということが起こってしまうのです。
望ましい対応
さて、先述したような症状が出てきた場合、
ご家族であれば少なからずショックを受けてしまうこともあると思います。
実生活でも今までしなかったような失敗(迷子やトイレの失敗など)が見受けられるようになります。
こんな時に注意しておいてほしいのは身近な人の対応の仕方です。
例えば人の認識の見当識障害で孫の顔がわからない場合、
「何バカなこと言ってるの!自分の孫でしょ!」
という感じの否定+強い口調で訂正しようとすると本人は混乱します。
本人の中では「え?孫?あなた10代で結婚もしてないのに、どういうこと?」
というようなズレた認識に至ったりします。
ではどうするのがいいのか?
相手の話に耳を傾け、目を合わせ、ゆっくり落ち着いて話を聞いてあげてください。
なんだかお坊さんのようなこと言っているように聞こえるかもしれませんが、
認知症対応において、最も重視するべきは本人の安心感です。
「この人といると安心できる」
と思ってもらえれば症状が和らぐこともあります。
逆に「この人は嫌な人だ」と本人の中に刻まれてしまうと
そのストレスにより認知症は進行してしまうこともあります。
認知症の進行はなかなか読めるものではありませんが、
周りの人が杖となり、苦手なことをサポートする環境をつくることが、
本人の安心感につながると思います。