認知症には以下のようなイメージがつきまといます。
・何でも忘れてしまって本人は気楽でいいよね
・毎回同じことを聞いてくる(わざとなのではないか?)
さて、皆さんはどう思いますか?
認知症というと「すぐ忘れる」「覚えていない」ということにフォーカスされがちです。
認知症の他の症状について、あまり考えたことがないのではないでしょうか?
今回は中核症状と言われている、
実行機能障害
についてお伝えしたいと思います。
今回の記事で
「え?認知症ってそんな症状も出るの?」ということがあるかもしれません。
脳のどこが障害される?
さて、これは認知症の中で有名なアルツハイマー型認知症によく見られる症状と言われており、
当然ですが脳のとある部分が障害されます。
それは前頭連合野という部分で、大脳の前方に位置する部分です。
症状としてどんな風に現れる?
実行機能障害が起こると、日常生活の中で物事を順序立てて進めることが苦手になってしまいます。
例えば料理はその典型です。
買い物から始まり、具材を洗って、切って、煮て、焼いて、炒めて、味付けして、お皿に盛って、などなど
皆さんが料理する時はこれらを自然にできている事が多いと思います。
さて、認知症当事者の世界ではどう見えていると思いますか?
まず買い物からですが、物事を順序よく組み立てて実行することが苦手な状態ですので、必要なもの以外も買ってしまいがちです。
カレーを作ろうと思って買い物に出たのに、いつの間にか買うものが魚に切り替わっていたり、
過去に買い物が済んでいるものを再び買うことを何度も繰り返してしまい、家の冷蔵庫には同じものが大量に入っていることがあります。
そしていざ料理の段階に入っても認知症当事者は悩みます。
一つ一つの動作はできるのですが、同時進行が難しくなります。
そのために料理を焦がしたりすることが多く発生します。
そして失敗してしまった本人は、失敗したことを隠すために通常では考えられないところ(押入れやタンスなど)に物を隠したりし始めます。
当事者の視点に立って考えてみる
さて、上記のような行動は認知症当事者ではない私たちから見ると「信じられない!ありえない!」という風に見えますよね。
けれど認知症ケアを考える上で大事なのは、一旦本人の視点に立って物事を見ることです。
当事者も「あれ?なんだかおかしい」という感覚がどことなくあると言われています。
そして今まで簡単にできていた料理で失敗すると、本人の中でも「失敗してしまった、恥ずかしい」などの感情が出てきます。
そのために隠すなどの行動に出ていると考えられています。
本記事の序盤に書いた認知症のイメージ「本人は忘れてしまって気楽でいいよね」という考えで接するのではなく、
本人の自尊心を気遣う、そんな対応が求められます。
まとめ
今回は認知症の中核症状「実行機能障害」について紹介しました。
認知症の症状や、当事者の気持ちを知ることで、介護の質は変わってきます。
そして忘れてはいけないのが、認知症は誰もがなる可能性のある病気ということです。
認知症になっても安心して暮らし続けられる街を創っていくためには、一人ひとりが認知症当事者の気持ちを考えることができるようになる必要があります。
明日は我が身なのです。
今回の記事を読んでいただいた皆さんが、少しでも周りの人たちと認知症の人の心を考えてくれるきっかけになれば幸いです。