認知症、それは高齢化社会の日本において、目をそらすことのできないものです。
これからもしばらくは日本人が認知症を患う可能性は高いままが続きます。
さて、そんな時代ですがタイトルにあるように、これを読んでいる皆さんは認知症の人が見ている世界を考えたことはありますか?
おそらくほとんどの人が認知症の人に対して
「急に怒り出すようになった」
「最近物忘れが激しい」
といった症状だけを見てしまっているのではないでしょうか?
他にも、
「自分の家族がそうなってしまったらしんどいかも・・・」
と考える方もいらっしゃるかもしれません。
ですが皆さん、ここで一度立ち止まって認知症の人が見ている世界を考えてみましょう。
認知症の人目を映る世界と、認知症でない私たちの見ている世界とでは、どうやらズレが発生しているようです。
今回は書籍「マンガでわかる!認知症の人が見ている世界」(著:川畑智 氏)を参考文献とさせていただいて、
みなさんと一緒に認知症ケアを考えていきたいと思います。
何度も同じことを聞く
「神戸までのバス代ってなんぼなん?」
生前の私の祖父が、当時大学生だった私に何度も聞いていた質問です。
当時は認知症のことについて全く知らなかった私。
周りの家族は「また何回も同じこと聞いて・・・」と呆れ顔。
例に漏れず私も同じことを思ってはいましたが、祖父母っ子であったことが幸いして怒りはしませんでした。
むしろ「2160円で行けるよ〜」と毎回同じ調子で答えていました。
そして答えを聞くたびに「おぉ〜そうなんじゃ。安いな〜。」という感じで満足気な祖父。
さて、ここで皆さんに質問です。
なぜ認知症の人は何度も同じことを聞くか、皆さんは想像できますか?
これは本人の中で
「あの話ってどうだったっけ?」
「覚えておかなきゃ・・・!」
という不安な気持ちが大きくなって、周囲の人に聞いて確認せずにいられないために起こる行動だと言われています。
もちろん「聞いたことを忘れているだけ」という側面もありますが、本人の中では聞いている回数は少ない、もしくは初めて聞いているという感覚にあります。
認知症の状態でない人はこの行動を見ると
「また同じことを何度も聞いて!」
「さっき言ったでしょ!」
という反応になりがちです。
これでは認知症の人は「え!?なんで怒るの?何か悪いことでも聞いたのかな?」と思ってしまいます。
同じことを聞かれても「〜〜ですよ。私が覚えてるから大丈夫ですからね」など、
本人の不安を取り除いてあげるように心がけるのが良いでしょう。
ここはどこ?
認知症の中核症状「見当識障害」が起こると
「今いる自分の場所がわからない」ということになってしまいます。
そのため、自身の家の近所であっても迷子になってしまったりしてしまいます。
他にもご本人が立ち止まって引き返さずにどんどん前に進んでいってしまいます。
私の住む徳島県であれば徳島市内から出て板野郡や小松島市まで行ってしまいます(ローカルネタですいません・・・)。
こんな時、ご家族は交番やガソリンスタンドなどで目撃情報を探るの良いとされています。
さて、またまた同じ質問ですが、なぜこのような行動をするのでしょうか?
多くの場合は本人は当てもなく歩き回っているのではなく、目的を持って歩いているようです。
「昔の職場」
「人生の思い出の場所」
これらに向かって歩き始め、当時とは景色が変わっていて道がわからなくなってしまった。
というパターンを良く聞きます。
本人を見つけたときには、そのことについて問い詰めたりはせず、
その世界に寄り添って話を聞いてあげることで、本人は安心するようです。
まとめ
今回は2パターンを紹介させていただきました。
認知症は誰もが患う可能性があります。
多くの人が「もしかして今本人にはこういうふうに見えているのかも?」
と、想像を巡らせることで本人に寄り添うことに繋がります。
そう考える人が増えることで、認知症になっても安心して暮らせる街になっていくのではないかと思います。
参考文献:
マンガで分かる!認知症の人が見ている世界
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